ミステリと現実(ダイイングメッセージ)

http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20050711#p1

まあ要は「現実にダイイングメッセージなんてあんのかね?」という話なんだけど、「ないと思うなあ」としか言いようがない。所詮できて遺言だろう。一応可能なパターンを考慮してみるか。

  • 周囲に人がいる場合

その場でトリックを見破って指さすなり言葉にする。しかも「犯人である」という告発だと理解される形で。時間的にも物理的にも無理。死にかけている状態でそこまで頭が回るとは思えないし、そう理解されるとは思わない。

  • 死が予測される状況での遺言

そりゃ予想であってダイイングメッセージではない。どうもこのアプローチでは無理そうだ。逆にいこう。

ダイイングメッセージに必要な条件は?

  • 自分の死が確定していること
  • 犯人が自分にのみ分かっていること

この2つは崩せない。つまり、「死は確定しているが、動ける」という体調がまず一つ。それから、犯人が分かっていることがもうひとつ。そしてその状態で、どう示すか。

  • 犯人がメッセージを改竄できないか、理解できないこと

前者なら名前を書いてしまえば良い。犯人が戻らないであろう密室に閉じこめられたとか、犯人は既に自殺してしまったとか。あるいは犯人には見つからず、捜索の時点で見つかると期待される場所に隠す。筆記用具がなかったら? 血でいいだろう。それ以外を考えるのは作家か現実に直面した人でいいだろう。

後者は挙げる以前に破棄したい。暗喩は証拠にならないから。どう考えても「メッセージそのものを隠す」ほうが現実的だ。

というわけで、まとめると「ダイイングメッセージなしでは犯罪は解決しない事件」というのは下記の通りとなる。

  • 被害者の死が確定していて、かつある程度動けること
  • 犯人を被害者は知っていること
  • 犯人からメッセージが隠蔽できること(犯人がうかつでメッセージなんて考えないか、死んだと勘違いしているか、とにかく改竄できないというオプションあり)
  • ……そして全く振れなかったが、警察の捜査では浮かびようがない犯人という最大の壁がある。

とりあえずフィクションとしての面白さは抜きにすれば、「犯人の名前を明示した文章」「筆跡鑑定」あたりが決め手になる必要がある。でも、そこまでしてもそれは「証拠」にはなりえるのだろうか? という不安はある。

やっぱりダイイングメッセージってミステリのメイントリックではなくて、あくまでおまけのちょっとした謎、止まりだよな。もうちょっと好意的に見ても、探偵役が考え方を改めるきっかけにするとか。普通のオチだな、やっぱり。

ということは、だ。逆にこの予想を全て覆すような「ダイイングメッセージ」を発案できれば凄いね、というお話だ。犯人告発をしないタイプの遺言なら凄いな、と思った作品は2つほどあるが、そのタイトルは書いちゃったら台無しだしね。まあ、犯人告発以外の遺言のほうが可能性がある、とは思っている。