秋季限定栗きんとん事件(米澤穂信)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

まああんまり露骨には書きませんが、読もうとしている人はスルーしてください。


小市民シリーズ第3作。とりあえず「小佐内さんコエエエエ」というのが第一。で、次に思ったのが「謎のスライド」。メインとなる犯罪の犯人はあまりにも考えどころがないが、それは罠。読者への謎はフーダニットではなくて、何がされたのかであるということ。端的に言えば「彼女は何をした?」というものでした。

まあ、夏季限定と同じといえば同じなのですが、放火という目くらましに騙されまして、謎の存在に立ち返ったのは放火犯がつかまってからでしたとさ。それにしてもこれは分からない上にコエエ。

といっても、放火のほうも理詰めで考えれば答えは一つ、というタイプのがっつり本格ではないですが。いままでのシリーズ作同様、「こう考えるとエレガント」とうのが答えになってましたね。それは作中に現れる小さな謎にもあてはまります。

時に、裏表紙のあらすじでは「小鳩君」表記なのですが、何故「くん」じゃないのだろう。単純に編集がタコなのかなあ。

にしても、全二作ではあまり露骨に表面化しなかった小市民たちの裏の顔が全面に出ていて、良い意味で居心地の悪い作品でした。「シャルロットはぼくのもの」みたいな箸休めもないし。冬季はどうなるんだろう。